巻頭文

ゲント
異時



『ゲント・ラサワという大陸がある。
  サハラ砂漠と沙漠(ル・サハラ)が占める西の地域――ゲントと。 
 湖(リーカ)と密林(ブルト)が占める東の地域――ラサワから成る大陸だ。
 私が流れ着いたこの地、ゲントには、8つの国と2つの都、
そしてもはや伝説と化した国が一つある。
 すなわち最も北の海に近い〈海の国〉エリア。
 〈北の大国〉バルクと
その隣国〈糸の国〉シャゼナン。
 バルクにほど近く、ヤライ河の水源にある〈玻璃(はり)の国〉ウィグ。
 〈東の大国〉メーウと、
ガッシュ山脈を挟んで隣り合う〈岩の国〉トルハーン。
〈南の大国〉サンロックと、
〈商人の都〉バクダットに、
〈薬師(くすし)の都〉トゥエヴン。
 そして〈果実の国〉コラサンと、
伝説と化して場所すら定かではない〈風吹(ふぶき)の国〉ミア=クルルーン』
              ―――『異邦人の日記』「序文」より





『〈果実の国〉コラサン。
 この国は〈果ての国〉とも〈まつろわぬ者達〉とも呼ばれている。
 コラサンの民の起源は地続きの隣の大陸、リアム・ウェルから来た人々と、ゲントの民の混血者である。
 それゆえ、彼らの色素は薄く、白い肌に金に近い髪、淡い色の瞳がほとんどである』
            ―――『異邦人の日記』「コラサン」より





『万物創造の主(アル・イラーフ)、大地を持って我らの敷物とし、
 大空を持って我らの偉大なる屋根とする。
 アル・イラーフの他に神は無し』
                  ―――『聖典(アル・クルアーン)』「序」より